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第281話 「ラストワンマイル」から学ぶべきこと

 

ラストワンマイルとは、物流用語で「お客様に物やサービスが届く物流の最後の接点」のことを指すそうです。「最後の1マイル」という現実的な距離ではなく、お客様に商品を届ける最後の区間のことを意味しているそうです。年々激化する通販市場において、送料を無料にしたり当日配送をしたりして差別化に取り組む事業者も増え、よりエンドユーザーに近い所に配送拠点を置いたりコンビニや駅などでいつでも受け取りを可能にすることで、ラストワンマイルを縮めてサービス強化をする動きが活発化しているということです。

 

物流業界と言えばトラック輸送のイメージが大きいのですが、実際にそのコストの半分以上は輸送費で、更にそのまた半分はトラックドライバーの人件費だそうで、その人材の高齢化や人手不足が深刻な課題だと言われていますが、ラストワンマイルにメスを入れて効果的な戦略を立てることで安心できるサービスの提供や収益の改善を実現できるわけです。工場からの発送や倉庫での管理ではロボットなどを使って自動化が進んでいるのに対して、ラストワンマイルは未だに人に頼っている部分が大きく、再配達による人件費の増加は大きな問題になっていて、ここに改善のヒントが眠っている…ということなのでしょうね。

 

このラストワンマイルという視点は、ものづくりの会社にも通じるところがあります。製造工程の大半は機械化・自動化されているにも関わらず、受注や納品の窓口は人間が行うため、ミスが発生したりクレームにつながったり…結果、失注したりやり直したりで、一気に会社全体の利益率を下げてしまうことにもつながりかねません。「仕方が無い」と諦めているその部分に、事業の収益構造を改善させるヒントがあるのかもしれませんね。

 

以前、初めて金属製品製造会社のコンサルティングをした時、一週間ほどその会社の中に入り込ませてもらった経験があります。当時はまだまだ経験も浅く、営業指導をするためにどんな仕事をされているのか知りたかったし、単純に現場を見てみたいという好奇心が強かったというのもあります。その時に、現場の社員さんに一人一人話しかけて様子を聞いて感じたのが「モノありきの組織づくり」という感覚です。モノありきの組織づくりとは何ぞや?と思われる方もいるかもしれませんが、これはものづくり業界の人間ではない私だからこそ感じた感覚です。

 

要は、「モノが流れて製品になっていく過程」というレールが真ん中に敷かれていて、そこに納期や材料や検査などが乗っかってきているというイメージです。目に見えるものに対しては、機械の操作手順や単価計算・スケジュール管理など大変しっかりされているのですが、目に見えないもの(例えば、仕事の教え方とか、顧客満足とか、個人目標の達成とか、そもそもの目標設定の考え方など)については急に苦手になるんだな、という感想を持ったのを鮮明に覚えています。

 

現場ではほとんどの工程に機械を使っていたので、ほぼ自動化されて効率化できているにもかかわらず、一方で、会社(特に中小企業)にとって最も大切な、「自社の価値を高める」とか、「付加価値をつけて高収益を狙う」といった重要な部分に手を加えられておらず、もったいないなと思ったからです。

 

その結果、何が起きるかと言えば、仕事の教え方が分からなかったり人によって教え方がまちまちだったりするので社員が育たないとか、現場しか知らない社員と、顧客の要望に直面する営業マンの間に温度差があって顧客への対応がまちまちでクレームになるとか、毎年の目標といえば売上やコスト削減などの数字しかなく、何年働いても自己成長ややりがいが感じられず辞めてしまう社員がいたりするのです。

 

例えば、「仕事の教え方」一つとっても、自分が上手にできることと、他人に上手に教えられることは全く別のお話です。人員が限られている中小企業では、「仕事が上手にできる人」がリーダーや管理職に就いているケースが少なくありません。ただ、その技術を他人に…しかも新入社員など不慣れな人間に教えようとすると話は違ってきます。

 

自分ができる人がやってしまいがちな失敗例としては、ずっと昔のできなかった頃の自分のことをすっかり忘れて、

 

「これぐらいはできるだろう」とか、

「これぐらい普通わかるだろう」

と思ってしまうことです。

 

しまいには、「なんでこんなこともできないんだ?!」という感情をあらわにしながら教えるものですから、仕事を教わる側からすれば、“わからないことがわからないレベル”だけれど、もはや質問すらできない空気感に飲み込まれてしまう、ということが起きてしまいます。決して全ての会社がそうだとは言いませんが、かなりの数の会社で「いつもの風景」のように見かけました。

 

物事の順番や、なぜそれをするのか?どうしてそれが大切なのか?がきちんと伝わらず、しかもできない方が悪いという空気の中で聞き返すこともできない新米社員は、同じミスを繰り返してしまうことになります。ミスをすればまた何倍もお叱りを受ける…という負のスパイラルに落ちてしまうのです。

 

事業を成長させるためには、売上や効率・納期スピード・顧客数など表面的な数値も大事ですが、その根底にある「考え方」や「基準」などの根幹となる「価値観」を明確にしておかなければ肝心なものを見失うことになります。高付加価値・高収益性・高価格販売など、多くの中小企業が望む経営体質を目指すために一番にやるべきことは、見えない部分の言語化です。

 

あなたの会社のラストワンマイル、そこを見直すことから始めてみませんか?

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